“泥舟”五輪強行で責任の「なすり合い」がついに始まった
まるで「爆弾回しゲーム」みたいになってきた。海外メディアに「変異株の祭典」(仏ル・モンド紙)とまで酷評される東京五輪。IOC(国際オリンピック委員会)や政府、東京都など主催者側は依然、強行の構えだが、全員が全員、責任のなすり合いを始めている。本番まで50日を切り、五輪スポンサーは「逃げの姿勢」が鮮明だ。
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〈一部の五輪スポンサーが水面下で、大会を9~10月に延期することを主催者側に提案〉――。
そう報じたのは、4日付の英紙「フィナンシャル・タイムズ」電子版だ。東京発の署名記事で、あるスポンサー企業幹部の「(延期して)ワクチン接種が進み、気候が涼しくなり、国民の反対も減ってから開催する方が得策」との発言内容を掲載した。
しかし、大会組織委員会は公式に「そのような要求はない」と否定。そもそも、「再延期だけはあり得ない」(組織委幹部)が共通認識だ。全81社からなるIOCや組織委のスポンサー企業の一部は、本気で「延期」が可能だと考えているのか。
「記事の中で企業幹部は『(延期)提案が大きく影響するとは思えない』とコメントしている。本気で延期できるとは思っていないだろう」と指摘するのは、ある大会関係者。こう続ける。
「このまま開催を強行し、結果的に感染拡大を招くなど大失敗に終わった場合、下手をするとスポンサー企業にまで批判が及びかねない。『あの企業が五輪強行に手を貸した』と世界中から攻撃される恐れすらあります。株主から突き上げも食らうでしょう。今のうちに『延期』を提案しておけば、後になって『うちはちゃんと主催者に物申しましたよ』と主張できる。要は“アリバイづくり”でしょう」
橋本会長は組織委をただの“イベンター”と強調
五輪スポンサーといえば、聖火リレーで伴走車両から音楽を爆音で流したことが批判の的になった。リレーコースとなったスタジアム内では、スポンサー企業以外の自販機に幕がかけられていたことが発覚。「そこまでやるか」と厳しい視線を注がれている。無理を承知で、延期くらい提案しておかねば、後々“返り血”を浴びかねないというわけだ。
スポンサーはすっかり逃げ腰だが、組織委も責任放棄状態だ。橋本会長は4日の会見で開催の是非を巡り、「IOCや政府、東京都が難しいという判断を下せば、それはそれで応えていかないといけない」と発言。その上で「組織委は大会開催のために委託を受けている団体」と、ただの“イベンター”に過ぎないことを強調した。
確かに決定権は組織委にないとはいえ、名指しした3者に責任を押しつける算段だ。前日に橋本会長は英BBCに「100%開催」と豪語していたのに、随分と無責任である。東京五輪関連の著書がある作家の本間龍氏はこう言う。
「本番まで50日を切っているのに、どのような形で開催するのかさえ決まっていないわけですから、スポンサーや組織委が責任逃れに走るのは、ある意味、仕方ないでしょう。本来、開催都市の首長である小池知事や開催国トップの菅首相が『コロナ対策の結果、安全安心を担保できた』『だから責任を持って開催する』などと発言すべき時期です。IOCだって、両者の発言には耳を傾けるはず。ところが、2人ともハッキリしたことを言わない。全世界の不安は募るばかりです」
最近は、菅政権のコロナ対策に“お墨付き”を与えてきた政府分科会の尾身会長まで、パンデミック下での五輪開催は「絶対に避けるべき」と発言。もはや、われ先にと皆、離反する“泥舟”と化した「平和の祭典」……。
これ以上、五輪憲章を傷つけないためにも潔く中止を決断すべきだ。