大阪桐蔭“1強”が向こう10年続く「2つの凄み」 神宮大会・春・夏の3連覇へ圧巻の強さ
130キロ後半投げても…この夏はベンチ外
今年入学した1年生にも逸材がゴロゴロいる。
「左腕の安福拓海(兵庫・神戸中央リトルシニア)は中3時ですでに189センチ、90キロと体格に恵まれ、最速144キロを投げる。スリランカ人を両親に持つラマル・ギービン・ラタナヤケ(愛知・港ボーイズ)は内野兼投手で中学通算50本塁打とか。関東出身では平嶋桂知(東京・稲城リトルシニア)が185センチ、88キロで両打ちの投打二刀流選手。宮城出身者もいて、岡田直也は東北楽天リトルシニアで強肩強打の遊撃手として有名でした」(アマ球界関係者)
高校野球に詳しいスポーツライターの安倍昌彦氏は言う。
「西谷監督は『大阪桐蔭に入りたい』という選手を1学年20人程度に絞ったうえで、全寮制で鍛えている。大阪桐蔭の選手層が抜けているのは控えメンバーはもちろん、ユニホームを着ていない選手にも逸材が多いこと。今年の部員は64人。20人ずつ3チームに分けても、3チームすべてにAランクの実力がある。選手のレベルは部内で大差がないといっていいでしょう」
安倍氏が選手層の厚さを実感した出来事がいくつかある。
「昨夏、森木大智(現阪神)擁する高知との練習試合を取材した際、ファウルボールを拾う1年生に、上背が190センチ以上あり、精悍で見るからに野球がうまそうな投手がいたのですが、『僕はまだ130キロ後半しか投げられないので』と謙遜したことに驚きました。その彼ですら、今夏はベンチ外です。今大会の旭川大高との初戦ではこんな光景が見られた。投手がブルペン投球していた時に誤って暴投した際、捕手のそばにいたボールボーイ役の選手がダッシュして球を拾いに行った時の足が50メートル5秒台は間違いない、と思えるくらいとにかく速かった。裏方ですら素晴らしい能力を持っているのが大阪桐蔭たるゆえんでしょう」
■娯楽は二の次、三の次
こうした逸材が3年間、大阪東部の大東市の山中にある寮で、徹底的に鍛え上げられる。
寮は携帯電話が禁止で、部屋にテレビはない。学校の構内のコンビニは利用でき、学外のコンビニに行ってお菓子を買うこともできるが、「1年生は500円、2年生は1000円までと使える金額が決まっている」(大阪桐蔭OB)とか。
前出の安倍氏が言う。
「大阪桐蔭は全国屈指の中学生の集まり。個々の選手のプライドも高い。彼らは他校以前にまず、『大阪桐蔭』という学内で戦っているのではないか。甲子園に一番近い学校でチーム内の競争を勝ち抜き、全国制覇をするために娯楽は二の次、三の次で、野球道場の修行僧のように日々、野球に打ち込んでいる。しかも、2年生エースの前田がこの日19得点を奪った強力打線を相手にシート打撃を行っているように、彼らは常日頃から非常に高いレベルで切磋琢磨し合っている。これが強さを維持する要因の一つだと思います」
3年生レギュラーの松尾、伊藤、鈴木はともに遊撃手として入学した。熾烈なレギュラー争いの結果、鈴木が正遊撃手の座を掴み、松尾は捕手、伊藤は三塁手に転向した。
今夏、大阪桐蔭が優勝すれば、松坂大輔を擁した1998年の横浜以来となる、秋(神宮大会)、春、夏の3連覇を達成する。それどころか、圧倒的なスカウティング力と苛烈な競争力を背景に向こう10年、「1強時代」を築いても何ら不思議ではない。