パリの聖火リレーが忘れている“本当の意義” 歴史、景観、伝統を発信することだけが目的ではない
しかし、最も大切な何かを忘れていないか?
コロナ禍の厳しい制限の中で行われた東京2020の聖火リレーを思い起こすとその開放感に圧倒されるが、あの時に問われた、コロナ禍でもやる意味はひとつしかなかった。古代ギリシャでは4年に1度、戦争を止めてオリンピアに集まり競技会を開いた。その開催を告げる使者がオリーブの枝を持って各ポリス(都市国家)を回った。「武器を置いてオリンピアに集まれ!」と。
聖火リレーは、オリーブの枝をトーチに替え、世界に休戦を呼びかける平和への訴えなのだ。
この根本原則をパリ五輪も想起すべきだ。東京が伝えきれなかったその意義をパリは発信しているか?
朗報があった。日本の中学生がギリシャ内のリレーに参加し、聖火ランナーとなっていた。オリンピア市と姉妹都市提携をしている愛知県稲沢市の9人の中学生だ。トーチを持った生徒は「日本代表としてのいろんな思いや意志が入ったトーチだと思います。その責任と思いを背負い、しっかり走れるように頑張ってきたい」と語った。実は東京2020でトーチの燃焼部分を請け負った愛知県の「新富士バーナー」が、パリ五輪でもトーチの燃焼部分とガスボンベを製造している。
「平和を考えて走りきってきたいです」とは伴走者の中学生の言葉だ。聖火リレーの意義を日本の若人が伝えていた。これから約60日間繰り広げられる聖火リレーの毎日は「フランス」を伝えるだけでなく、「休戦」をアピールしなければならない。