露呈した日本男子バレーの限界 監督退任で遠のく悲願…イタリアに「あと1点」から急転直下
ブラン監督の退任、主力の長期休養宣言
フランス出身のこの監督が、2016年のリオ五輪以前の6大会中5大会で五輪出場を逃してきた“弱小ニッポン男子”を変えた。
中垣内祐一前監督が「日本人の得意なディフェンスをさらに磨き上げ、能力を引き出せるコーチは誰か」と招へいしたのがブラン氏だった。
フランス代表を始め、イタリアやポーランドなどさまざまな国での指導経験を持つ知将は、2017年から中垣内監督のもとで日本代表のコーチを務め、21年東京五輪後に監督に就任。さるバレーボール協会関係者がこう言う。
「ブラン監督が掲げたのは『堅守』と『ミドルブロッカーの得点力アップ』でした。特にレシーブを強化。ブロックとレシーブのシステムを緻密に構築し、細かいシチュエーションごとに『ブロックはこのコースを締めて、レシーブはここに入る』という約束事を徹底。これにより、サーブを含めたレシーブ力が格段に上がり、簡単に失点しなくなった。高橋藍とリベロの山本は世界トップクラスの守備力といわれるまでに成長。さらに、サイド攻撃に偏り過ぎてミドルの得点力が低かったことで、ブラン監督は選手たちにセンターエリアからの攻撃を増やす意識を植え付けた。特にセッターの関田には『真ん中を使え』と口を酸っぱくして言い続けていました」
昨年はネーションズリーグで3位となり、主要国際大会で46年ぶりのメダル獲得。パリ五輪予選も突破した。パリ五輪前には世界ランク2位まで上り詰め、第1ポット入りを果たしたところまでは良かった。しかし、「金メダル奪取」を目標に掲げたパリ五輪がいざ始まると、石川、高橋藍の不調もあって波に乗り切れなかった。
「1次リーグ初戦でドイツに敗れたのがケチのつけ始め。2戦目にアルゼンチンには勝ったが、3戦目の米国に完敗。ぎりぎりの8位で辛くも準々決勝に進んだため、全体1位のイタリアと戦うことになった。石川を始め、この日のスタメンのほとんどが30歳前後で成熟期。協会内には『ブランが日本の監督をやっている間にメダルを取りたい』という声が多かったので残念です」(同前)
指揮官の退任で暗黒時代への逆戻りを懸念する声もある中、さらにこの日、3本のサービスエースを含む22得点を挙げ、獅子奮迅の活躍を見せた西田が、4年後のロサンゼルス五輪について聞かれ、「数年は代表を休むと思う。この7年、代表として戦い続けてきた。故障などもありながら、無理しながら来ているので」と衝撃の長期休養宣言である。
急激に強化が進んできたが、新体制で継続できるかは未知数。最大のチャンスを逃した「男バレ」の空虚感はとてつもなく大きい。