ロッテ1位 西川史礁 父の思いが詰まった20坪の「甲子園」は鹿児島の黒土、2500Wの照明を完備
ロッテ1位 西川史礁(青山学院大・21歳・外野手)
「自主練習の環境は、どこの家庭にも負けません」
姉、兄の3人きょうだいの末っ子として生まれた西川の父・凌滋さん(59)は、こう言って胸を張る。
凌滋さんは和歌山県日高郡の建設会社「株式会社西川組」の社長を務める。従業員は約20人。西川の母・マリさん(54)が事務として会社をサポートしている。
建設業の“特権”を生かし、4学年上の長男・藍畝さん(26)が小学4年、西川が幼稚園のころ、約280坪の自宅の敷地内に、20坪ほどの大きな練習場を自作した。
足場は黒土で固め、少年野球用のプレート(16メートル)と硬式野球用のプレート(18.44メートル)も埋め込んだ。夜間でも練習できるよう、約2500ワットの照明も付けた。
「仕事柄、球場の工事で土を扱うことがあり、そこで余った土を有効活用しました。ちっちゃい時から“洗脳”やないけど、甲子園の土みたいなイメージを伝えたくて。おそらく甲子園の土は春と夏とで違いがあり、いろいろな土地の黒土を混ぜていると思いますが、ウチの黒土は鹿児島から取り寄せた。自分で足場を組んで、網で囲ったバッティングスペースをつくって。硬式は(ボールの)回転数がすごいんで、すぐ網が破れる。何重にも重ねてヨソに飛ばないよう、補修しながら練習していました。普通に工事したらウン百万円はいくでしょう。軟球のボールはヒビが入って割れるし、硬式のボールも糸が切れるので、その都度入れ替えました。ウチは柴犬を1匹飼っていて、今は一部をドッグランにしましたが、(史礁が)『野球する間はそのまま置いといてくれ』って言うので、いつでも練習できるよう網も土もそのまま。普段は近所の子らが練習で使ってくれています」
凌滋さんは毎日欠かさず自宅での自主練習に付き合った。
「日によって差はありますけど、長男と2人合わせて毎晩、だいたい400~500球はティーを上げていました。長男は硬式で次男は軟球。練習場が広いから真正面から放れる。(打席の)5メートルくらい前に網のついたてを置いて下からトスを上げる。距離がある分、打球の角度が分かるんですが、ボールが跳ね返って後ろから飛んで来るから、長男が中学で硬式になったタイミングでキャッチャー用の面とヘルメットを買いました。成長するにつれて打球も速くなるから命懸けです(笑)。次男が小学1年から野球を始めて、長男が平安高校に入学するまでの5年間ほどは2人を相手にしていたから、体力的にも大変でした」