山崎ナオコーラ(作家)
7月×日 早朝、家を出る。午前中の子守は書店員の夫が遅番なので託す。私はカフェでエッセー執筆。その途中、10時から発売開始の音楽チケットをネットで購入。「障害」のある人にも開かれたコンサート。秋になったら家族で行くつもりで4枚。昼、夫は出勤。私は7歳の子を畑に送る。習い事として野菜を育てているのだ。それから3歳の子を自転車に乗せ、図書館へ本の返却に行く。図書館前の広場で近所の大学の吹奏楽部が、演奏会の宣伝と称して短い野外ライブを始めた。アンパンマンなどの曲も演り、子が喜ぶ。司会の学生が「今度、大学で本番の演奏会をするので、聴きに来てください。小さい子も、車椅子を使っている方も、歓迎します。途中の出入り自由です」と言う。そうだ、そうじゃなくちゃな、自分も大学時代にマンドリン部をやっていたが、こういう開いたことをやれば良かった、と省みた。いや、今からでも、本をもっと開こう。開かれた本を作ろう。
夜、丸山正樹著「刑事何森 逃走の行先」(東京創元社 1980円)を読む。デフ・ヴォイスシリーズのスピンオフ。「障害」だけでなく、開いていくべきことがたくさんある。そのために文学がある。
7月×日 立川のPLAY! MUSEUMで「谷川俊太郎絵本百貨展」(7月上旬終了)。谷川俊太郎著「とき」(太田大八絵 福音館書店 1100円)を買う。時代と場所の交錯を子も楽しむ。
7月×日 古代文明好きの7歳児と、上野のトーハクで「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」展。後日、譽田亜紀子著「知られざるマヤ文明ライフ」(寺崎秀一郎監修 スソアキコ絵 誠文堂新光社 1760円)を読む。生贄が怖くてたまらないが、文化は知りたい。
7月×日 某文学賞受賞の挨拶で市川沙央さんが「読書バリアフリー」を提唱なさった。深く頷く。市川沙央著「ハンチバック」(文藝春秋 1430円)を読む。当事者としての覚悟を感じる。私も覚悟を持って文学に挑みたい。