「私の人生変わってた…」若尾文子が抱く市川雷蔵への思い
1本終わればすぐ次の作品に入る過密スケジュールで、夜通しの撮影も珍しくなかったという。そんな中でもスタッフとのコミュニケーションを大切にし、和やかに談笑する雷蔵は現場のムードメーカーだった。
「私、仕事中は共演者とお食事に行かなかったんです。だから、雷蔵さんも私のこと誘いにくかったみたい。『結構です』と言われそうで。でも、一度ごちそうになったことがあるんです。京都のおそば屋さん。すごくおいしくて、お礼を言ったら『何だ、それだったら早く誘ってあげりゃよかった』って。その後は毎年お正月にハワイ旅行されるたびに、お土産を届けていただいたりしていました」
お互いに垣根を取り払い、次第に距離を縮めていく2人。雷蔵の劇団「テアトロ鏑矢」に参加する計画もあったという。
「亡くなる前の年に、一緒に劇団をつくろうと誘ってくださって。2人で立ち上げて1作目を上演する具体的な話まであったんですよ。だから、もし亡くならずにいたら、今も元気に舞台で共演していたかもしれません。私の人生も、大きく変わっていたかも」
大映は雷蔵の死後2年で倒産。その後、若尾は映画にドラマに活躍を続け、お父さん犬の母親役でソフトバンクのCMに出演するなど、美貌に変わりはない。「できる間は頑張る」と精力的に仕事に取り組み、10月の舞台ではヒロインを務める。