著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

2015年の放送界 「BPO」と「ドラマ」で振り返る

公開日: 更新日:

【連載コラム「TV見るべきものは!!」年末拡大版】

 この一年の放送界を振り返る、恒例の年末拡大版だ。まずは、3月に発覚したNHK「クローズアップ現代」やらせ問題である。

 出家詐欺を扱った回で、事実とは異なる人物を登場させたり、恣意的な映像を見せたりしながら、偽りのスクープともいえる内容が流された。

 BPO(放送倫理・番組向上機構)が調査を行い、11月に公表された意見書では、当事者である記者に重大な放送倫理違反があったと指摘。報道番組で許容される範囲を大きく逸脱した取材方法や表現を用いたことを強く批判した。

 この意見書が異例だったのは、記者やNHKへの意見だけでなく、政権与党に対して、個々の番組に介入すべきではないこと、またメディアの自律を侵害すべきではないと強調した点にある。政権によるメディアコントロールがさらに強まることを警戒・牽制しており、BPOの矜持さえ感じさせる、筋の通ったものだった。

 BPOが懸念するように、今年は政権の露骨なメディアコントロールが続いた一年だ。各局の報道局長に対する公平中立要請。「クロ現」への総務大臣による厳重注意。自民党情報通信戦略調査会が行ったNHK経営幹部の事情聴取。また自民党の勉強会での「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番。経団連に働きかける」という暴言。そして、前述のBPOの意見書を軽視する政権中枢。来年は、メディア側の自覚と自律がより求められることになる。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末