(2)寿命の差は男性ホルモンの血管保護作用が弱いから
年齢と照らし合わせた生存率をたどると、50歳までは男女のペースはほぼ同じである。
それが50歳以降になると、男性の死亡率が上がり、80歳までの間に女性に水をあけられてしまう。しかし、80歳以降には、また男女同じペースで生存率が低下していく。
つまり50歳から80歳にかけての男性の体に、何か医学的な異変が起きていると想像できる。
50~80歳における男女の死亡数を、人口動態統計(2008年度)の病因別集計から検討してみると、その年代の主な死因疾患は、悪性腫瘍・がん、それと脳梗塞や心筋梗塞といった血管系疾患だ。がんによる死亡者は男性約14万人、女性約7万人。血管系疾患でみると、男性約5万5000人に対し、女性約2万6000人。
両疾患ともに、男性側の死亡率が女性の約2倍で、がんに加え脳梗塞・心筋梗塞といった血管系疾患が男性側に多すぎるのは明らかである。なぜ、このような性差が出現するのか? 簡単に言えば理由はこうだ。
男・女性ホルモンは、ともに血管保護作用がある。加齢によって性ホルモン低下が起きてくると血管の硬化が始まる。しかし、女性は閉経後、女性ホルモンが急激に減少しても、成人期での女性ホルモンの血管保護効果がとても強力なので、その残像が80歳近くまで残る。さすがに、80歳ごろになると動脈硬化機序が動き始め、心・脳血管性障害の病死が急増してくる。