もうひとりがビートたけしの相手役の忽那汐里だ。芸歴はすでに長いが、本作ではビートたけしを翻弄する役を、こちらも静かだが、体の奥に火がついたような切迫感をにじませながら演じてみせた。彼女もまた、西島とは違った種類の闇を、男によって植え付けられていたのだ。2人の闇は人間誰しもが抱えているものかもしれないが、リアルに映画から迫ってくる。
本作は香港出身のウェイン・ワンが監督した。日本人監督とは一味違った演出手法が、俳優の新境地を引き出すのだろうか。そのあたりも見てもらいたい作品である。
(映画ジャーナリスト)