落語ファン森末慎二氏が語る桂枝雀師匠との出会いと別れ
番組本番では、僕はロス五輪の時に選手だけがもらえる参加賞のメダルを差し上げ、無事に話もでき、ホッとひと安心。ところが、ロス五輪の映像が流れた途端に号泣……。しゃべれなくなってしまいました。師匠は「そんなにワタシの落語は悲しいですか」なんてボケていらっしゃいましたが(笑い)。
その後、知り合いの落語家・金原亭世之介に勧められ、師匠のテープで勉強させていただき、ボク自身が高座に上がったりもしました。講演をする時のしゃべりにもすごく役立ちましたね。
一度、僕が「親子酒」をやっているのをビデオに撮って師匠に送ったことがあります。そうしたら「一言、言いたいことがある」と。それなら稽古をつけてもらおうかとアポイントもないまま、住所を頼りに世之介と2人で新幹線に乗って、大阪にある師匠の家を訪ねました。
でも、師匠は人と会うような状態じゃなかったんですね。家にいるのは階段を上がったりするのが見えてわかったんですが、電話を入れても取られない。2月の寒い時季、世之介と2人でボーッと4時間、家の前で待ったんですけど、あきらめて帰りました。
それから2週間ぐらいしてからです、師匠の自殺未遂のニュースを聞いたのは。後に奥さまから「師匠が僕の送ったビデオテープをよく見てましたよ」と聞いてうれしかったですが、結局、僕に何を言いたかったのか聞けずじまいでした。