落語ファン森末慎二氏が語る桂枝雀師匠との出会いと別れ
でも、枕元にラジカセを置いてテープをセットし、師匠の落語を聴きながら横になると、スッと眠れた。師匠の“七色の声を持つ”といわれた声に安心できたんでしょうね。眠れると疲れも取れるし、調子がいい。ロスにももちろん、テープとラジカセを持っていきました。師匠の落語があったからこそ、五輪でいい結果が出せたのだと思いますね。
生で聴いたのはロス五輪の翌85年に現役を引退し、芸能界に入ってからです。87年に歌舞伎座で師匠が3日連続独演会を開き、その初日に自分でぴあで前売りチケットを買って聴きにいきました。もう感激して涙が出ました。
■直々にお会いする夢がかなったものの…
88年には直々にお会いする夢がかないました。師匠が司会を務めていた大阪のお笑い番組「枝雀寄席」(朝日放送)に呼ばれ、対談させていただいたんです。本番前、控室にご挨拶に行って、熱い思いを伝えました。でも、師匠はそのころ、うつっぽくなっていたのかもしれません。「そう言われましても、ワタシ、そういうことは気にしない方ですからねぇ」と。心を動かされなくなっていたのかもしれません。