愛弟子・小西博之が語る 松方弘樹さんの「豪快伝説」<上>
僕にとっては「時代劇と夜の師匠です」と肩を落とすのは“コニタン”こと小西博之さん(57)。先日、亡くなった俳優の松方弘樹さん(享年74)とのくめども尽きぬ思い出について語ってもらった。
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駆け出しだった僕に京都の夜の醍醐味と時代劇のイロハを教えていただいた師匠が松方さんでした。初めてお会いしたのは87年秋。東映の京都撮影所で行われたTBSの正月大型時代劇スペシャル「徳川家康」の現場で、松方さんは主人公の家康、僕は福島正則の役でした。初の東映で緊張していましたが、「きょうは終わったら用事あるのか? ないのか。よし、飯行くぞ」と声をかけてもらい、初日の夜に連れて行ってもらったのは松方さん行きつけの祇園のステーキ屋。「とりあえず500グラムでいいか」「ハイッ!」。肉汁がいまにも滴りそうな100グラム1万円のヒレステーキがじゅうじゅうと音を立てて運ばれてくるわけです。「酒は飲めるのか?」「ハイッ!」。
すると、ヘネシーのボトルが一本、ドーン。その場には衣装さんや床山さんも駆け付けていて、「欽ちゃんところの小西や、きょうはおもろい芝居しとったわ。これ、飲め!」です。わざわざ、僕のお披露目を兼ねた食事会を開いてくださったのは、松方さんの気遣いそのものでした。