希代の俳優 松方弘樹さんが語っていた“酒と女と役者バカ”
昭和の大スターがこの世を去った。松方弘樹。享年74。昨年2月に10万人に1人といわれる難病「脳リンパ腫」を患い、1年におよぶ壮絶な闘病生活を送っていたが、先週21日に都内の病院で亡くなっていた。
「おぉ、1日は何時間ある? 24時間だろう。それをどう使おうと、自分次第じゃないか」
かつて日刊ゲンダイが仕事術をテーマにインタビューした際にはこう語っていたものだ。まさに1日24時間を全て使い、海を泳ぐマグロのように決して止まることなく生き抜いた人生だった。
1960年に東映入りし、同年の「十七才の逆襲・暴力をぶっ潰せ」でいきなりの主演デビュー。昭和の映画スターは仕事も女も豪放磊落。広島ヤクザの抗争を描いた「仁義なき戦い」シリーズでは、こんなエピソードを語っていた。
「9歳も(菅原)文太さんが上だから、どこをどうやっても、ぼくのほうが顔が若い。当然、横に並ぶと迫力で負ける。それで、洗面器をふたつ用意して、片方に熱湯、片方に冷水を入れて、撮影前に顔を交互に突っ込むんです。そうやるとシワができるって誰かが言って、根拠も何もあったもんじゃないけど、取りあえずやっていた。やけどか水ぶくれみたいになって、顔がジンジン痛かったのを覚えてます。『完結篇』では目の下に朱をひいていた。不気味な雰囲気を出すためですよ。すぐににじんでしまうから、ワンカットごとに入れ直してましたね」