「山田孝之のカンヌ映画祭」は虚実皮膜を楽しむドラマ
俳優・山田孝之が仕事を決める時、低予算も深夜枠も関係ない。挑戦的な企画、共感できる制作陣、何よりその現場が刺激的かどうかで判断する。「山田孝之のカンヌ映画祭」もそんな一本だ。
山田がカンヌでの受賞を目指し、プロデューサーとして映画製作に取り組む。作品名「穢の森」。主演は芦田愛菜。父親を死なせた母親とその愛人に復讐する。監督は「マイ・バック・ページ」の山下敦弘と、3・11直後の東京をドキュメントした「トーキョードリフター」の松江哲明。さらに撮影は是枝裕和監督作品で知られる山崎裕だ。マジで見たい。
番組は山田たちの映画作りのプロセスを追っていく。なんと山田と山下は敵情視察とばかりに、本物のカンヌ映画祭に潜入。そこに集う映画関係者に「穢の森」のデモ映像を見せたり、映画製作についてのアドバイスを受けたりするのだ。そして先週はキャストのオーディションを行っていた。
また「殯の森」でカンヌの審査員特別大賞を受賞した河瀬直美監督も登場。「賞より中身。そこに魂はあるのか」と山田を叱る。このあたり、演出だと分かっていてもドキドキする。
一体どこまでが実で、どこからが虚なのか。もちろん全部が虚かもしれないが、その中に隠された実もある。この船酔いにも似た虚実皮膜の揺れを楽しむのがこの番組だ。