LION/ライオン~25年目のただいま(2016年、豪国)
昨年のアカデミー賞レースに絡んだ話題作は、タスマニアで暮らすインド人青年サルーが主人公。5歳のときインドで迷子になったことから養子に。慈悲深い養母に育てられながらも、つらい過去に悩まされ続ける。
ある日、大学の友人の勧めで、グーグルアースを駆使して故郷探しを始める。実の母親と兄弟は今も自分を探してると信じて。迷子になった当時の記憶を頼りに日夜、パソコンに向かうが、故郷探しは親切な養母に対する裏切りだと心を痛める。そんな彼に養母が明かした胸の内だ。
養母は、厳しい父へのトラウマから、子供につらい思いをさせる大人にはなりたくないという考え。出産できる体だが、不運な子供がたくさんいる現代は、そういう子供を助けることに意義を感じ、夫と合意の上でサルーを養子に迎えたことを打ち明ける。オスカー女優ニコール・キッドマンのセリフにグッとくる。
映画の肝は、少年が迷子になって電車に閉じ込められながらも、何とか食事や水を得て生き延びるシーン。悪辣な人身バイヤーから逃れる姿がスリリングで、スッと少年に感情移入できる。この手の映画は、子役が大事だ。少年は見事にハマっている。
文明の利器を駆使してようやく故郷を探し出す真実の実話。波瀾万丈の末、四半世紀ぶりに実母と再会を果たすシーンでは、胸が熱くなる。