ラビング~愛という名前のふたり~(2016年・英国/米国)
罪状は、結婚――。1958年、ラビング夫妻は逮捕される。当時、肌の色が違うと、結婚が許されなかったのだ。
異人種間結婚は神への冒涜(ぼうとく)だと罵られ、故郷を追われる。窮屈な環境で家庭を築くが、幼子の将来に不安を抱いた黒人の妻は、司法長官への手紙で自由を訴える。長官は米自由人権協会へ相談、妻は弁護費用の援助を受けて裁判を起こす。
でも、裁判映画ではなく、カメラは支え合う2人を追い続ける。白人の夫は武骨で寡黙だが、妻を愛し懸命に家庭を守る。最高裁判決の日、弁護士に判事への伝言はあるかと尋ねられると、「オレは妻を愛している」とぽつり。そのシーンが渋くてカッコいい。
夫は弁護士やマスコミを信用できず、妻の言葉のみ信じる。妻はそんな不器用な夫を思いやり、自分が前面に出て発言する。見事勝訴し、結婚は生得権と認められた。
米国で異人種間結婚が合法化された契機となった2人を記念し、6月12日は、米国では「ラビング記念日」に制定されている。勝訴から数年で、夫が事故死しても、妻は再婚しない。2002年に亡くなる前のインタビューで語った言葉だ。
本作を見ていると、仲のいい夫婦はいいなぁとつくづく思う。ヘルシーな感動を呼ぶ恋愛ドラマは、「英国王のスピーチ」でアカデミー賞に輝いたコリン・ファースが脚本に惚れこみ、製作された実話だ。