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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

テレビは“使命”を思い出し、今こそ福島・辺野古に踏み込め

公開日: 更新日:

「何を運んでるんですか?」と聞いても黙ったままだ。ディレクターが横で、「お米でしょ?」って聞けばと指示した。「このお米、どこに持って行くんです?」と尋ねると、秋田からだという婆ちゃんが居直ったか、

「これはコシヒカリだべ、札幌の寿司屋に買ってもらうべな」

 と。もう一人もほっかむりを取り、

「もう明日から『闇米』は運べないし、別にテレビに顔映っていいや。今日は警察に捕まらないさ」

 と口を開いてくれた。その直後、取締官が最後の巡回にやってきたので、我らはカメラを止めて隠し、取材のお礼に婆ちゃんの横に並んで座り、知り合いのように話し、彼らが通り過ぎるまで芝居をして、その場をごまかしてあげた。

 次の週、テレビは最後の連絡船を放送した。連絡船に愛着のある利用客のお別れコメントを紹介し、「やっぱり、涙の連絡船となってしまいましたよ。感動の旅でした」と、オレもスタジオで締めくくった。

 道内の米作りがまだまだの時代。特上米など道内でわずかだった頃、「闇米」を密売するため、体を懸けて渡っていた婆ちゃんの顔は、ワンカットも映らないまま終わった。顔をボカして声だけでも流せばよかったのにとディレクターに言うと、上司から“連絡船は美しく終わらせよう”ということでカットされまして、と言われた。テレビマンよ、今こそ、汚染土がたまり過ぎている福島にも、基地にされる辺野古にも、踏みこんでいく時じゃないのか!

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