マーシャル 法廷を変えた男(2017年、米国)
黒人差別を扱った法廷映画は「アラバマ物語」をはじめ名作が並ぶ中、本作は異色だ。1940年に実際にあった裁判を映画化している。
米国初のアフリカ系黒人の最高裁判事サーグッド・マーシャルの若き日の弁護士時代を描く。
黒人運転手スペルは、雇い主の白人美人妻エレノアをレイプした罪で訴えられる。マーシャルはその無罪を立証すべく弁護を引き受けようとするが、担当判事が「他州の所属だから」と難癖をつけ、補佐は認めるが、法廷での発言を禁ずる。
ピンチヒッターに抜擢されたのが、民事専門のユダヤ人弁護士サムだ。公判が始まると、意外な事実が判明する。
法廷が開かれた当時、ナチスの台頭で、ユダヤ人は激しい差別に遭っていたはず。そんなユダヤ人とタッグを組んだマーシャルを演じるのは、昨年の大ヒット作「ブラックパンサー」で名を馳せたチャドウィック・ボーズマンだ。差別を受ける側の2人のタッグが面白い。
2人は、白人のチンピラに襲われる目に遭いながらも、屈することなく裁判に挑む。立ち向かう姿をご機嫌なソウルミュージックが盛り上げ、軽妙にテンポ良く描く。息詰まる法廷劇との融合が絶妙だ。
セリフは、エンドクレジットで流れるマーシャルの肉声。現在の国際情勢を先読みした彼の言葉は重い。1993年に他界した彼の実話は、見ておいて損はない佳作といえるだろう。