著者のコラム一覧
クロキタダユキ

デトロイト(2017年、米国)

公開日: 更新日:

 1967年夏、米国史上に残る大暴動がデトロイトで発生。3日目の夜、黒人の若者がモーテルの窓から警察隊に向けてオモチャの拳銃を発砲する。そこから白人警官が目を覆いたくなる蛮行を繰り返して……。

 黒人3人を殺した白人警官3人はその後の裁判で無罪を勝ち取るが、本作は当事者の記憶と記録を基に戦慄の一夜をサスペンスフルに再現。上映時間143分が短く感じるほど緊迫したドラマが展開する。

「ハート・ロッカー」でイラク戦争の悲惨さを描いて女性初のアカデミー監督賞を受賞したキャスリン・ビグローは、米国でいつだれが巻き込まれても不思議ではない日常の恐怖に焦点を当てる。演出がノリノリでテンポがよく、観客を恐怖の底に落とし込む。ヘタなホラーより怖く、観賞後は言葉を失うはずだ。

 黒人を人間とも思わないレイシストの白人警官を演じるウィル・ポールターは、あまりに残虐な行為の連続で、演技中におえつしてしまったほど。それほどえげつない行為が容赦なく続くのだ。

 セリフは、虐待が眼前で行われていると知りながら無視したミシガン州警官の言葉。多人種国家の本音が垣間見えるが、白人警官の蛮行を告発することを目的にしているわけではないだろう。いまだに闇に包まれた惨劇の実写化。監督の狙いはそこだと、見ていて強く感じた。大暴動が起きた67年も現在も、米国が抱える人種問題を見事に浮き彫りにしている。

【連載】セリフ1つ読む映画

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  4. 4

    永野芽郁は大河とラジオは先手を打つように辞退したが…今のところ「謹慎」の発表がない理由

  5. 5

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  1. 6

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  2. 7

    威圧的指導に選手反発、脱走者まで…新体操強化本部長パワハラ指導の根源はロシア依存

  3. 8

    ガーシー氏“暴露”…元アイドルらが王族らに買われる闇オーディション「サウジ案件」を業界人語る

  4. 9

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  5. 10

    内野聖陽が見せる父親の背中…15年ぶり主演ドラマ「PJ」は《パワハラ》《愛情》《ホームドラマ》の「ちゃんぽん」だ