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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

いじめられている子はどう書かれようとLINEは金輪際見るな

公開日: 更新日:

 昼下がり、東京駅までJR中央線の電車に乗ったらがくぜんとさせられた。車内、見渡す限りの乗客たちがスマホを睨んで、いじっていた。目の前の席の若いOLもスマホを一心不乱に睨みこんでいる。のぞくとよく分からないゲームに、女は無我夢中だった。文庫本でも読んでるなら、そのうつむいた顔を見てみたかったが、ゲーム女には何の興味もいかなかった。その隣に座る40男は金メダルでももらえそうな指さばきで、LINEに必死に格闘していた。そんなに急いで何か知らせなければならない相手なのかよ? オレは理解不能だった。さらに隣の女も口を真一文字にしてLINEの画面を見ながら、時折、ニタニタ笑っていた。昔、車内で平気で口紅を引きながら化粧する女子がいて、まだ人間らしくて愛らしく思えたが、ニタ女は気味悪かった。

 新聞や本を広げる人はいない。全員がスマホをいじっている。日本中の人間がスマホにとらわれている。そんなに四六時中、周りを気にかけていないと置いてきぼりにされるのか? 車窓から変わりゆく街の風景を眺める余裕のある人間は誰もいなかった。そんな無言の電車から降りたくなった。

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