表現の自由の侵犯 「主戦場」騒動で問われる今後の映画界
今年の東京国際映画祭が11月5日に静かに閉幕した。静か過ぎて寂しいくらいだったが、同時期に国内外で大きな注目を集めた映画祭が他にあった。KAWASAKIしんゆり映画祭だ。慰安婦問題を題材にした「主戦場」という作品の上映をめぐり、二転三転したからだ。
コトは「主戦場」の上映が中止されたことに始まる。映画祭の共催者である川崎市が訴訟中である同作品の上映に難色を示し、映画祭側はそれを受け入れたのだが、若松プロダクションが猛抗議に出た。映画祭で予定されていた自社製作の2作品の上映取りやめを決断し、記者会見も開いて不当な中止を訴えた。是枝裕和監督も映画祭に参加し、中止を痛烈に批判した。
これらがきっかけになり、映画祭は最終日の4日に「主戦場」を急きょ上映したのである。映画祭側は事後の状況で問題の重要さと大きさが分かり、対応能力を問われた。ただし、急きょの上映実施に対する川崎市側の意向はいまだに不明瞭だ。そもそも、川崎市は何を「懸念」していたのか。それはどこで誰によって生じたのか。すべて、分からずじまいだ。