米国版「深夜食堂」ある男の1週間がコミカルでやみつきに

公開日: 更新日:

 多くはつましく暮らす庶民で、ローラは菓子が285個売れたからお祝いしようとはしゃぎ、インド人は家族のことで愚痴を連発。バーの黒人青年は失恋し、マスターは妻にどやされる。まるで米国版「深夜食堂」。実にほほ笑ましい。家の近所にこんな店があったら楽しいだろう。

 パターソン市は人口15万人。主人公はここに生まれてここに育ち、おそらくこの地で死ぬのだろう。その彼を日本の詩人が預言者のように勇気づけて去っていく。詩人の相づち「ア~ハァ」が絶妙。永瀬はいい役をもらったよ。

 この映画は何が面白いのか分からない。ただ、バーやバスの会話にかつてわれわれ日本人が営んでいた触れ合いが感じられるのだ。人々は主張し、ぼやき、そして悲しむ。それをパターソンとマスターが受け流し、ときに受け止める。緩やかな交わりが米国流の人情であるらしい。こうして穏やかな暮らしが続いていく。久しく忘れていた人情が米国映画で蘇えるとはいささか皮肉なめぐり合わせ。感動のポイントに国境はないということか。

(森田健司/日刊ゲンダイ)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    岡田阪神は「老将の大暴走」状態…選手フロントが困惑、“公開処刑”にコーチも委縮

  2. 2

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  3. 3

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  4. 4

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  5. 5

    中日・根尾昂に投打で「限界説」…一軍復帰登板の大炎上で突きつけられた厳しい現実

  1. 6

    安倍派裏金幹部6人「10.27総選挙」の明と暗…候補乱立の野党は“再選”を許してしまうのか

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    79年の紅白で「カサブランカ・ダンディ」を歌った数時間後、80年元旦に「TOKIO」を歌った

  4. 9

    阪神岡田監督は連覇達成でも「解任」だった…背景に《阪神電鉄への人事権「大政奉還」》

  5. 10

    《スチュワート・ジュニアの巻》時間と共に解きほぐれた米ドラフト1巡目のプライド