草刈正雄 コロナ禍で考えた家族と仕事「後悔ないように」
2016年にNHK大河ドラマ「真田丸」で、真田昌幸役を演じて注目を集めた草刈正雄さん(68)。娘でタレントの紅蘭や女優の草刈麻有とは親子共演したり、65歳で初の写真集を出版するなど人気が再燃中。今年で俳優生活50年を迎えたが、コロナ禍に重なり、自粛中は仕事や家族について考えてきたという。
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■「半沢直樹」を見て勇気をもらった
もともと「家にいる」のが好きな“うち虫”と自身を表現する草刈さん。緊急事態宣言下のステイホーム期間はどう過ごしてきたのか。
「僕は家が好きだから困ることはなかったけど、それでも事態の深刻さには体がこたえました。気持ちはふさぎますよね。仕事は中断し、テニスもおあずけです。家でずっとテレビを見ていましたね。役者という仕事は一人じゃできないし、周囲に支えられてたことを痛感しました。また、最近だとドラマ『半沢直樹』を見てて、役者たちが熱量をもってぶつかっている。その世界に引き込まれて、スカッとしますよね。役者は視聴者に勇気や笑いを届けられる。コロナ自粛を経験したからこそ、俳優業の役割というのか、価値を見直すことができました。そして役者だけでなく、人間は一人では生きられません。非常時に寄り添って支え合える家族が大事。めんどくさがりで“うち虫”として、ゴロゴロできるのも、妻がいてくれるからこそ。家にいるのが一番居心地いい」
初孫が生まれたときには号泣したという。おおらかなお父さんの明るいイメージがあるが、本人は大家族にあこがれていた。父親はアメリカの軍人で朝鮮戦争で戦死、母ひとり、子ひとりの関係だった。
■後悔のないように「ありがとう」や「ごめんね」と思っていることは伝えたい
「自粛期間中、考える時間があるでしょう。母親とは心を開けなかった部分があります。母は福岡県の行橋で僕を産んで、2人で小倉に住んでいました。勝手に僕が『母に愛されていない』と思い込んでいたこともあって、つらいときもありました。口には出さないけれど『運動会だって、一緒に弁当を食べたことなんてなかったじゃないか!』とかね。若いころは仕事がうまくいかないと母親に当たったし、つらかっただろうなと振り返るんです。最後まで甘えられなかったなあ。でも、僕が17歳で上京し、1年くらいして母親を東京に呼んでずっと一緒に過ごしました。僕に家庭ができて別々の期間はありましたが、やっぱり再び一緒に暮らして……。10年前に自宅で倒れましてね。妻が異変に気付いて僕を呼んだときにはもう亡くなっていて、母にすがりついて、何度も『ごめんね、ごめんね』と謝ったんです。本当はどう思っていたのかな。九州にいたかったのかなと今でも思います。親が健在なうちにしてあげたらいいこと……は難しいですね。周りは一緒に暮らせて幸せだったんじゃないかと言ってくれますが、後悔のないように『ありがとう』や『ごめんね』と、思っていることを素直に伝えたかったです」
時々、言葉を詰まらせながら少し目を潤ませて、母親への思いを語った。