2度目の緊急事態宣言は時短…“最終上映17時台”の影響は?
年明けから映画界は新型コロナウイルスによる苦難の道、試練のときを迎えている。昨年から続く何度目のことだろうか。もちろん、映画界だけの話ではない。多くの業種も同じである。今週、1都3県だった緊急事態宣言発令が大阪や愛知なども加わり、11都府県にまで広がった。
映画界は1都3県のシネコンを中心とした働きかけに伴い、「上映終了時間を午後8時まで」とした。大方のシネコンで最終上映の開始時間が午後5時台か午後6時台になっている。このような映画館の時短措置が、7府県にも及ぶことになる。
前回の緊急事態宣言時と何が違うか。昨春は全国の映画館が営業の休業を決めたが、今回はあくまで時短の“働きかけ”があっただけで休業などの“要請”ではない。だから、映画館への補償はない。これをどう捉えるかだが、非常に微妙な面がある。
■「全面休業」より「時短」はベターだが…
映画館の日々の興収面だけを見れば、「全面休業」より「時短」のほうがベターであろう。しかしながら、全国公開規模の作品の1都3県の通常時の興収シェアは全体の40%超を占めている。配給会社ともども時間限定上映によって少なからぬ損失を被ることになるだろう。
近年、最終上映回の動員は以前ほどではないにしても、若者層を対象にした作品になればなるほど、ある程度の興収シェアをもつ。邦画でいえば、製作費や宣伝費などがかかった経費から、目標の興行数値が決まってくる。本来の正常な状態で想定される目標値が時間限定上映だと、明らかにその達成が揺らいでくる。それは作品の収支に影響を与えることになる。製作会社や配給会社がこの点をどのように見通すのか。今後重要になってくると思える。
ホラー映画の米作品「ザ・スイッチ」は先週、いち早く公開延期を決めた。作品の権利をもつ米国側の姿勢など理由はいろいろあるようだが、映画館の時短営業による興行面への不安が背景のひとつにあると推測できる。緊急事態宣言がどの地域まで広がるのか、予測不可能な要素も見込んでのことだろう。
■話題作「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は公開再延期
さりとて、完全な想定などできない。昨年の休業要請と今回の時短の働きかけの違いは、映画界にとって単純な話ではないのである……と、書いてきた矢先に、1月23日から公開予定だった庵野秀明・総監督の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の公開再延期が決まった。「感染拡大の収束が最優先」との判断である。
今年最初の大ヒットがほぼ確約されていた作品だけに影響は計り知れない。今後も配給会社、それも邦画、洋画によって様々な対応が出てくるかもしれない。
先ほど2月公開予定の話題作も延期検討中との話が入ってきた。上映するのも延期するのも大変な覚悟、決断、作業が必要である。時短そのものも含め、緊急事態宣言下の人々の不安なマインド、自粛ムードが広がる中、映画興行はどうなっていくのか。苦難の道、試練のときとは、現実の厳しさに加え、その先が全く見えないという意味も大きい。