著者のコラム一覧
てれびのスキマ 戸部田誠ライタ―

1978年生まれのテレビっ子ライター。「芸能界」というビジネスは、いかにして始まったのか。貴重な証言を収録した「芸能界誕生」(新潮新書)。伝説の番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」を基に描く青春群像ノンフィクションノベル「史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記」(双葉社)。2つの最新著が絶賛発売中!

好きなことで生きていくため松下洸平が無くさない矜持

公開日: 更新日:

 なぜなら、そのパフォーマンスの性質上、換気ができないライブハウスで行うのは難しく、デパートの屋上などで歌っていた。すると家族連れの観客が多く、子供は「お絵描きしてるお兄さんが楽しそうに歌っている」と勘違いし、ステージに上がってきてしまうのだ(テレビ朝日「徹子の部屋」21年3月25日)。

 絵が得意なのは、画家である母親の影響だ。幼い頃から実家は画材屋と同じにおいがするようなアトリエで、母が描く絵に筆を走らすような子供時代を過ごした。高校も美術科に進学し、将来は画家など美術関係の仕事に就くのだろうと漠然と考えていた。だが、突然転機はやってくる。

 美大を目指していた高3の時、映画「天使にラブ・ソングを2」を見て衝撃を受けたのだ。翌日には母親に「歌手になる」と宣言した。母親は猛反対したが、せめてダメになった時のために、何か資格を取得してからにしなさいと諭した。その時に「この若さで人生に保険をかけたくない」(同前)という答えが返ってきて、その覚悟に母は根負けした。

 母もまた画家でありながら、もともとは大会で賞を取るほどのボディービルダーだったり、突然、アフリカに一人旅に行ったりするような、自分のやりたいことをやって生きてきた人だった。松下洸平もまたそんな母の血を受け継いでいる。

 母は芸能の道に進むことになった息子にひとつだけ約束をさせた。「嫌いになるまでやりなさい」(同前)と。それが好きなことで生きていくために、絶対になくしてはいけない矜持なのだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」