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増位山太志郎元大相撲力士

1948年11月、東京生まれ。日大一中から一高。初土俵は67年1月場所、最高位は大関。引退は81年3月場所。引退後は日本相撲協会で審判部副部長を務めた。74年「そんな夕子にほれました」、77年「そんな女のひとりごと」などがヒット。画家として二科展入選の常連。「ちゃんこ増位山」(墨田区千歳)を経営。

<4>場所が終わると拍子抜け…日本人の体には相撲が染みついている

公開日: 更新日:

 今回からは本職だった相撲について、これまでの経験で感じていることをお話しします。

 名古屋場所(7月)は7場所ぶりに出場した白鵬が優勝(全勝)したけど、常々思っているのは相撲は横綱がいなくても、力士が何人か休場しても、それなりに盛り上がるということです。横綱がいないなら、いないなりに、「主役」が出てきますから。

 夏場所(5月)は横綱不在で照ノ富士が優勝して、名古屋場所では14勝で準優勝して横綱に昇進しました。横綱がいなくても、次、若手が出てきてどんどん新陳代謝し、若手が活躍するとそれが人気になって、うまく回っていく。この流れにもパターンがあります。力士は大型化するとケガが多くなって小型化、また大型化して……。その繰り返し。不思議とそうなっている。

 そういう中でトップにいる横綱は責任を持たないといけない。横綱の、他の力士との違いは何かというと番付が落ちないことです。落ちないから辞める時は自分で決断しなければならない。新陳代謝が生まれないので横綱がそのポジションをどかないといけない。そうしないと下が、上がってこれないわけですから。

 そう考えると、1年に1場所しか相撲を取らない横綱では困るし、そういう横綱は横綱とはいえないと思います。一般社会でもそれは同じで、トップは居座ってはいけないんです。

 このところも、生きのいい若手がたくさん上がってきているじゃないですか。

 NHKのBSでは三段目くらいから見れるでしょ。下から見て、これはという力士の名前を覚えて、追っかけたらいいと思います。親方になった気持ちで、この力士は出世しそうだとかね。出世していく力士、ダメになっていく力士……そんな目で楽しむ。

 僕なりには何が面白いかというと、柔道とかと違って無差別級ということですね。小よく大を制す、です。体が大きい人は体格では有利だけど、動きの面では不利な時もある。小さい人は体格では負けても俊敏に技を繰り出せる。勝敗は、そのせめぎ合いです。

力士をサラリーマン社会に置き換えて応援してみると面白い

 例えば、大物を食ってやろうとか。これも、その人なりに、力士をサラリーマン社会に置き換えて応援してみると面白いかもしれません。

 最近は番付の下の取組から場所に見に来ている若い女性もいます。目をつけた力士が育っていくのを楽しみにしているわけです。中には15日間ずっと見にくる女性もいますから。

 今はコロナで場所に観客を100%は入れていません。コロナが収束したら、好きな人はチケットを買って見に行ってほしいですね。チケットを買ったら、中入りの取組とかで前がいっぱいになるまでは前で見ても大丈夫です。番付が上がるたびに新しい技を覚えていくのをチェックしたら楽しいですよ。そんな目をつけた力士の取組を目の前で見て楽しんでほしいですね。

 場所が終わると拍子抜けします。「昨日のこの時間は相撲を見てたよな」なんて寂しくなってね。日本人の体には昔から相撲が染みついているんですよ。 =つづく

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)

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