「安倍晋三とジャニー喜多川」政治と芸能を取り巻く状況は相似形をなしている
上映後のトークイベントに登壇した古賀さんが訴えたのは、終わったはずのアベ政治にわれわれの日常が支配される不条理。映画製作は「主役」の安倍元首相が暗殺されてから困難を極めたという。くだんの日刊ゲンダイのインタビュー記事で思わず目が引かれたのは「安倍さんの呪縛から解かれて自由になるかと思ったら逆。『死者に鞭を打つのか』と」のくだり。ぼくが同じ日の本連載で芸能界について語った次の一節とあまりに酷似しているではないか。「未解決問題を抱えて他界した政治家を批判すれば『死者に鞭打つのか』ときつく非難されるような」。そう、安倍晋三とジャニー喜多川、つまり政治と芸能を取り巻く状況は相似形をなしているのだ。ザッツ・この国のカタチ。
先週末、BBC『プレデター』の本編(全1時間)を入手してスマホで観た。画面には「行為」の様子を証言する元ジャニーズの男性たち。当時未成年だった彼らの生々しい告白を観れば、どんなジャニーズファンでも性加害疑惑を風評と受け流すのは無理だろう。ジャニーズと仕事を重ねてきたぼくも、告白を最後まで見届けるのは相当つらかった。記者はなおも糾弾を止めない。故人の行状を知る機会があっても、日本のメディアやスポンサーは誰も大きな問題にはせず、利益を生みだす仕組みを守ってきた。今なお故人の名誉は守られ、威光は利用され、仕組みも残っている、と。