出世作を生んだ三遊亭円丈の言葉 「君は君以外になれない」と言われ目が覚めた
1993年、彦いちは二つ目になったものの、とたんに暇になった。
「たいていの若手は二つ目になると暇になるもので、僕はカヌーにハマりました。それがアウトドアの最初です」
彦いちは落語界きってのアウトドア派として知られる。
「茨城県の那珂川で、カヌーをこいでた時に、アウトドアの情報誌、BE-PALの編集者と知り合い、連載を頼まれるようになったんです。最近はやりの1人キャンプもよくやってました。海外にも行ってます。最初がミクロネシア。東京で暮らすよりも生活費が安くすむという理由で2週間も滞在してました(笑)。その後も、ユーコン川をカヌーで下ったり、バイカル湖で現地の人と相撲を取ったり、テーブルマウンテンで奉納落語をしたり、カザフスタンの芸人に会いに行ったり。外国に行くと何か面白い出来事があるので、落語のネタになるんです」
当初は、自分で見聞きしたことを高座で面白くしゃべることができなかったという。
「無理にオチを付けようとして失敗したり、試行錯誤の連続でした。そんな時期に(三遊亭)円丈師匠にアドバイスされたんです」
新作落語の旗手、円丈が主宰する<応用落語>は、1991年に池袋の文芸坐ル・ピリエで始まり、彦いちは前座時代から使ってもらっていた。