ジブリ新作「君たちはどう生きるか」は宣伝ゼロ作戦で打って出た 鈴木敏夫P“100億円超え”の勝算は?
“二極化”はますます進む
「知名度が高い作品にとって“宣伝ゼロ”作戦は有利に働きます。ファンの飢餓感をあおり、公開直後に感想がSNSを通じて拡散され、バズりまくる。そうして成功したのが庵野秀明の『エヴァンゲリオン』や井上雄彦の『スラムダンク』でした。ただこの手法が通用するのは“ブランド力”と作品自体の“実力”あってこそ。
実際に作品がイマイチだと、負のスパイラルも考えられ、もろ刃の剣にもなりえます。宮崎駿氏の引退作をうたった『風立ちぬ』が興行収入120億円ですから、少なくとも100億円を超えなければいけないでしょうし、鈴木プロデューサーは算段があっての挑戦なのでしょう。
しかしながら、ジブリや東宝など業界トップ企業が宣伝費を使わないとなると、小規模作品は宣伝予算を失い、大作だけが独り勝ちする“二極化”はますます進むはず。将来的には映画業界全体が衰退してしまう懸念もある。ディズニーは広告宣伝費を削ってインフルエンサーに宣伝を任せ、何でもベタ褒めしたコメントと実際の作品との期待値に差が生じ、残念な結果になったケースもありました。旧態依然とした宣伝手法が過渡期を迎える中、ジブリの新作は一つの試金石になることでしょう」
鈴木Pの「ゼロ宣伝戦略」は吉と出るか、凶と出るか。