【四月歌舞伎評】仁左衛門と玉三郎の共演…劇的で至福な、夕方6時5分からの20分間
そこで美を補うのが『神田祭』ということになる。ここ何年か、この組み合わせで上演され、定番化した。『神田祭』はカーテンコールに代わるものとも言える。なんとも贅沢だ。というわけで、その次の菊之助や愛之助たちの舞踊劇は霞んでしまう。
愛之助と菊之助にとっては、昼の部の『夏祭浪花鑑』が見せ場。愛之助はこれまで主人公の団七は何度も演じているが、歌舞伎座では初めて。最近は吉右衛門、勘三郎、勘九郎、海老蔵時代の團十郎と、東京の役者が演じることが多かったので、本場・大阪の団七が歌舞伎座で上演されるのは久しぶり。
一寸徳兵衛は菊之助。昨年6月に、博多座でこの2人で演じ評判が良かったので、東京への凱旋でもある。それにあたり、愛之助は珍しく女形にも挑み、お辰との二役。予想以上に、さまになっていた。
■名コンビ誕生の雰囲気
菊之助と愛之助は先月の『寺子屋』でも緊張感のある芝居を見せた。名コンビ誕生の雰囲気だ。菊之助は、先月の『伊勢音頭恋寝刃』でも、幸四郎の脇をつとめていた。何か期するところがあるのだろう。
こうして、劇界地図が書き換えられようとしているなか、来月は團菊祭。團十郎と菊之助が激突する。
(作家・中川右介)