目を見張る市川團十郎の13役“ワンマンショー” 「星合世十三團」に客席どよめく
順番が逆になったが、昼の部は、市川團十郎が『義経千本桜』の主要13役を早替わりで演じる『星合世十三團』。今月は昼・夜とも大長編の圧縮版だ。そう言えばコロナ禍後は『仮名手本忠臣蔵』も通し上演がない。興行として難しいとの判断なのか。
團十郎が演じる13役のなかでも中心になるのは、渡海屋・大物浦では知盛、鮨屋では團十郎のワンマンショー的なものだが、いがみの権太、川連法眼館の狐忠信。
かなり割愛しているが、物語は分かるようになっているし、團十郎の早替わりは、客席にどよめきを生む。なにしろ、たとえば、鮨屋の場では、権太と、父・弥左衛門と、弥助・維盛の三役を早替わりで演じていくのだ。
宙乗りもあれば、満天の星や桜の花を過剰なまでに見せ、最後は映像でそれまでの13役を見せてくれるなど、あらゆる方法で目に訴える。
昼の部は松也や右近たちが出ていれば、もっと面白くなったのではないだろうか。
コロナ禍後は、歌舞伎座の座組も一門の壁を越えて、適材適所の配役が見られるようになっているなか、團十郎だけが、その流れに加わっていないのが残念だ。