「感動」の一言では表現できない…パリ五輪には人生のドラマがある
久々に五輪を見ている。3年前はこのコラムでも東京の金まみれ欲まみれの五輪開催に反対していた。選手に罪はない。それはわかっている。しかしそれを隠れみのにして、結果大きな収賄スキャンダルが起きていた。
そんなこんなで東京五輪は一切見なかった。本来なら寝不足になるぐらい、選手たちの数々のドラマを見るのが常だったのに。
今回のパリ五輪も問題は多々あるのだろう。映像にIOCのバッハが映るだけで少し嫌な気持ちになった。
しかし開催国の問題は多少目をつぶり、今回は競技を楽しむことに。
いきなりの慟哭であった。
きょうだいでの金メダル連覇が確実と思われた阿部詩選手がまさかの2回戦で敗退したのである。ポカンと空を見つめる詩選手。柔道家としてかろうじて礼はするもののコーチの胸で崩れ落ちた。人間があんな声で泣くのは見たことがない。
仏は柔道大国だ。競技人口は日本の4倍。柔道を知る観客は詩選手の思いに寄り添った。巻き起こるUTAコール。次の選手たちも彼女の退出をじっと待った。勝ったケルディヨロワ選手は喜びを抑えた。結果的に彼女が金を取った。その時に初めて表情を崩した。