高嶋哲夫(作家)

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3月×日 今年の冬は、温かくなったり、寒くなったり。観測史上最大の積雪という言葉も何度か聞いた。これも地球温暖化による異常気象か。

 3月に入り、ここ何年も温めていた題材の本を2冊、何とか仕上げた。「エネルギー」と「教育」。小説以外のものだ。どちらも、日本を変える非常に重要なものだと自負している。と言っても、出版社は決まっていない。

 それにしても昨今の世界、思わぬ独裁者たちの出現で、混沌、殺伐としている。長引く戦争、世界に現在進行形の戦争はいくつあるのか考える。戦争とは殺し合い、壊し合いだ。どんな状況であっても、避けなければならないと信じている。

3月×日 脳ミソが悲惨な現実に固まって、さらに沸騰し始めているときに送られてきた、1冊の文庫。郷原宏選著「ふと口ずさみたくなる日本の名詩」(角川春樹事務所 924円)詩集だ。

「日本語を磨き、こころを豊かにするとびきりの55篇」「あなたの人生に寄り添うことばと出会う」帯の言葉です。現在のような殺伐とした世界に生きていると、ホッとする言葉です。

 ページをめくると、〈詩は音楽です。言葉という音符によってつくられた音楽です〉〈言葉の音楽は黙読しただけでも聞き取れますが、声に出して読むと、もっとよく聞こえるようになります〉なるほど。そして、「ひとを恋う心」「伝えたい想い」「心さびしい日に」「季節のなかで」「哀しみのとき」「生きるよろこび」……と続く。優しい言葉の並びだ。でも僕の人生は……、焦りにも似た気持ちが生まれます。

 電車に乗るとほとんどすべての人の手にスマホが握られている。そっとのぞき見るとゲーム、マンガ、SNSを見て、読んでいる人たち。僕もスマホは手放せない。オフロ以外は手に持っているか、ポケットの中。常に半径1メートル以内にある。

 電車の中、スマホ代わりに詩集を広げてみた。目で読み、口の中で復唱し、心で広げる。心が豊かに、世界が変わる気がする。ちなみに郷原宏さん、「カナンまで」でH氏賞受賞の詩人であり、僕の先生、友人です。

【連載】週間読書日記

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