「女の顔は胸から上のこと」巨乳時代は平成から始まった
野田義治が手がけたマネジメント戦略は、「巨乳ビジネス」と呼ばれた。
昭和の時代、男たちは女の胸の大きさを口にするのも後ろめたさがあった。ビクトル・ユゴー、谷崎潤一郎のように洋の東西を問わず文豪は脚フェチであり、インテリは胸よりも脚を称賛した。
大きな乳房を好む男はマザコン、好色、思慮の浅い男とでも言われかねない風潮があった。そこに公然と異議を唱えたのが野田義治だった。野田は男たちが封印してきた巨乳への憧憬を堂々と肯定した。
「女の顔というのは胸から上のことを言うのです」
私が野田義治本人と面識をもったのは、平成に入ったころだった。野田義治は元祖巨乳アイドル堀江しのぶを抱え破竹の勢いに乗りかかったときだった。彼女を発掘し売り出し、さあこれから、というところで、野田義治は運命の濁流に押し流されていく。
こわもてでぶっきらぼうな語り口の野田義治であるが、いぶし銀の低音はスティーブ・マックイーンの吹き替えでもやれそうな声質である(私はあの魅惑的な声こそ、野田義治最大の武器だと思っている)。