<1>ドン・ファンは殺害される数日前から何度も「会いたい」と電話をかけてきた
■「とにかく来てもらえませんか」
彼は、18年5月24日夜に、和歌山県田辺市の自宅寝室で変死体となって発見された。私はこの日の夕方に、彼からの電話を受けている。
「どうしても会いたいので(田辺に)来てもらえませんか?」
この数日前から彼は、私に会いたい、会いたいと何度も電話をくれていた。
「どうせ6月1日には聖路加に来るんでしょ。その時でいいじゃないですか」
彼は定期検診のために月に1、2度は東京・築地にある聖路加国際病院に来ている。そして次回が6月1日であることも把握していた。
「それではダメなんです。なんとかなりませんか?」
「離婚ですか?」
「……それはお会いした時に話しますから。とにかく来てもらえませんか」
ドン・ファンが夕方4時に電話をくれるのは珍しい。というのも、深夜1時や遅くとも3時には起床する彼は、夕方6時すぎが寝る時間なのだから、4時は一般人にとっての深夜に近い感覚であろう。それなのに私に会いたいと電話を何度もかけてきたのだから、断るのも不憫に思ったのである。