アフリカと欧米でHIVの新規感染者が激減した2つの理由
一方、エイズ発症後は同じようにいかない。たとえば進行性多巣性白質脳症を発症すれば、認知症が出て寝たきりになる。悪性リンパ腫であれば抗がん剤が効かず、死に至ることもある。
「ところが日本では、30%の人がエイズ発症後に感染が判明。検査で見つかる人より発症してから見つかる人が多い地域もあります。この10年、日本でのエイズをめぐる状況は変わっておらず、HIV、エイズともに新規患者数は同じ数字で推移しています」
新規患者数を減少させる方法は明らか。まず、HIV感染者を早期発見し、全員治療する。ところがこれが日本ではハードルが高い。
保健所に行かないと匿名無料検査ができないため、「行く時間がない(保健所は土日が休み)」「人に知られると困る(知人が保健所に勤めている可能性がある)」などの理由から、気軽に検査を受けられない。諸外国では、唾液にて自分で検査できるキットや郵送すればOKの方法など、いろいろな検査オプションがあるが、日本では認可されていない。
次に、感染リスクが高い人の予防薬(PrEP)の服用だ。WHOも強く推奨しており、世界40カ国以上で承認されているが、日本では未承認。日本で予防薬を自費で買えば、1錠3800円もするため、インターネットでジェネリック薬を個人輸入するしか現実味はない。しかし、未承認ゆえに医師が勧められず、予防薬が有効な人に情報が届きづらいのが現状である。