スマートリングは新型コロナ感染拡大防止に役立つのか
ウエアラブルデバイスは医療の中心へ
こうした中、一歩リードしているのが指輪型のデバイス(Oura Ring)だ。研究のため、医療関係者以外にも北米男子プロバスケットボールリーグ(NBA)で採用される方向で話が進んでいるという。
「時計型に比べて身軽だからでしょう。ただ、現状では、Oura社のスマートリングは医療機器ではありません。また開発初期段階であり、根拠となるデータの開示が乏しいため、疑問視する医療関係者も少なくありません。あくまでも現時点では“予測結果を参考に、ユーザーがPCR検査などを適切に受けるのを促すことが狙い”としています。Oura社は、ユーザーを増やしながら、精度を上げていく戦略を取っているようです」(永田氏)
こう言うと“なんだ、やっぱりウエアラブルデバイスなんておもちゃの類い、単なる話題か”と考えがちだが必ずしもそうではない。ウエアラブルデバイスは米国ではすでに一部医療機器として認められており、指輪型は時計型よりも優れている面が多いという。医療技術に明るい埼玉医科大学総合医療センター客員教授で医師の奥真也氏が言う。
「FDA(米国食品医薬品局)は、Apple Watchの心電図など一部のウエアラブルデバイスを医療機器として認めています。Oura社のスマートリングはいまは医療機器として認められていませんが、時計型に比べて指輪型の方が皮膚へ密着していてモニターしやすいことから、ウエアラブルデバイスの進化系と言えます。いずれ医療機器として認められる可能性が高い。咳などの情報はスマホなどで自身で打ち込まなければなりませんが、計測データと本人の状態など幅広い情報で新型コロナウイルス感染症の発症を判断できる設計になっているようです」
現時点では研究用だが近い将来実用化される可能性が高い。
「このデバイスが注目されるもうひとつの理由は、同じスマートリング同士が長時間近くにいた場合、アラートを出すよう作られていることです。NBAが採用に積極的なのはそのためでもあると思います」(奥氏)
地球温暖化による激しい環境変化で未知なる感染症の登場が予想される中、いつまでも感染症対策が「マスク」と「手洗い」だけというわけにはいかないのだ。