下山祐人
著者のコラム一覧
下山祐人あけぼの診療所院長

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

余命1年…家族の希望で本人には末期と悟られないように療養

公開日: 更新日:

 その患者さんは乳がんと多発骨転移により末期状態にある80歳の女性の方でした。食事はほとんど問題なくでき、痛み止めも子供や大人まで使えるごく一般的な薬カロナールで対処できていましたが、1カ月ほど前から食欲不振で病院を受診したのち一気に状態が崩れ、ご家族はその病院の医師から「余命は1年ほど」と告知されました。そこでご家族は、お看取りが近く医療依存度の高い方を多く診ている施設の入所を決断し、そこからの依頼を受け、当院が診療をさせていただくことになったのでした。

 ご本人は末期であることや予後の話などは聞かされておりません。施設の入所も、いったん状態を整えて家に帰るためと伝えているとのことで、そんな患者さんに対し私たちも診療中は、けっして末期であるとご本人には伝えず、少しでも明るい気持ちになるように努めたのでした。

 朝の全体ミーティングにおいては、スタッフ間でも認識を共有し、常に電子カルテを表示し確認するようにするなど、最大限の配慮を行い、療養に当たったのでした。

 このように在宅医療では治療面だけでなく、精神的な側面であっても、常に患者さんとご家族の生き方に寄り添い配慮するのはもちろんですが、その場合、なにが正解なのか、現場でいったん立ち止まり考え、自問自答しながら訪問診療を行うように努めているのです。

【連載】老親・家族 在宅での看取り方

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    岡本和真と村上宗隆のメジャー挑戦に“超逆風” 大谷バブルをブチ壊したMLB先輩野手の期待外れ

    岡本和真と村上宗隆のメジャー挑戦に“超逆風” 大谷バブルをブチ壊したMLB先輩野手の期待外れ

  2. 2
    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

  3. 3
    佐々木朗希の今季終了後の「メジャー挑戦」に現実味…海を渡る条件、ロッテ側のスタンスは

    佐々木朗希の今季終了後の「メジャー挑戦」に現実味…海を渡る条件、ロッテ側のスタンスは

  4. 4
    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

  5. 5
    「あぶない刑事」100万人突破で分かった…舘ひろし&柴田恭兵“昭和のスター”の凄みと刑事役の人材不足

    「あぶない刑事」100万人突破で分かった…舘ひろし&柴田恭兵“昭和のスター”の凄みと刑事役の人材不足

  1. 6
    ソフトB山川穂高「無神経ぶり」改めて露呈…31試合ぶり本塁打も身内から異論噴出

    ソフトB山川穂高「無神経ぶり」改めて露呈…31試合ぶり本塁打も身内から異論噴出

  2. 7
    石丸伸二候補に大逆風…「恫喝」訴訟で2連敗、都知事選後の国政進出シナリオも狂いが

    石丸伸二候補に大逆風…「恫喝」訴訟で2連敗、都知事選後の国政進出シナリオも狂いが

  3. 8
    蓮舫候補に一発逆転の「神風」は吹くのか…7.7都知事選「一歩リード」の小池知事を猛追

    蓮舫候補に一発逆転の「神風」は吹くのか…7.7都知事選「一歩リード」の小池知事を猛追

  4. 9
    都知事選最終盤に飛び交う「蓮舫狙い撃ち」の怪情報…永田町に出回る“石丸2位”データの真の狙い

    都知事選最終盤に飛び交う「蓮舫狙い撃ち」の怪情報…永田町に出回る“石丸2位”データの真の狙い

  5. 10
    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」

    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」