(17)処方薬の中には症状悪化につながるものが複数含まれていた
私は混乱した。こうなるほんの2カ月前、母自身も自分に異変を感じ、地域の総合病院に脳の検査に行ったことがわかっている。その際、何の異常もないと言われたと聞いていた。わずか数カ月で急激に脳の萎縮が進むものなのだろうか。それとも何か見逃しがあったのだろうか。この疑問はいまだに解けていない。
入院した母に面会することはできなかったが、叔母たちは下着や院内で着る服を準備し、車で片道30分以上かかる病院まで届けてくれた。一度「これ以上の世話は無理だから」と言われたが、結局、とことん手助けしてくれることに感謝するしかなかった。
実家に一人残された父は、体調が悪いとこぼしながらも病院に行くことを拒み、ヘルパーの手配の提案も受け入れなかった。ここまで頑固な人だっただろうか。4匹の猫たちのことも気がかりだったが、コロナ禍でますます東京からの移動が白い目で見られるようになり、これ以上私にできることはなかった。
いや、それはただの言い訳かもしれない。母の入院を納得していない父と言い争いになるのが嫌だった私は、電話で様子を尋ねることすら避けるようになっていった。(つづく)
▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。