新型コロナウイルス感染症が認知症の引き金に?1252人のデータ分析
感染症は、認知機能の低下や認知症の発症リスクを高めることが知られています。新型コロナウイルス感染症もまた、認知機能の障害や脳構造の変化を認めた症例が報告されています。同ウイルスの感染に伴う全身の炎症反応は、認知症の原因物質と考えられているアミロイドβタンパク質の産生を促す可能性も指摘されていました。
そのような中、新型コロナウイルス感染症と認知機能の関連性を検討した研究論文が、「ネイチャー メディシン」という学術誌の電子版に2025年1月30日付で掲載されました。
英国で行われたこの研究では、血液や組織などの検体情報や治療情報が集約されている大規模データベースを用いて、1252人の登録者が調査対象となりました。
新型コロナウイルスのパンデミック以前、およびパンデミック中における検体情報や認知機能テストの結果などが収集され、認知機能に対する同ウイルス感染の影響が分析されています。
その結果、新型コロナウイルスに感染した場合、血液中のアミロイドβ42とアミロイドβ40の比率の低下を認めました。アミロイドβ42は脳内に蓄積しやすいことが知られており、血液中のアミロイドβ42とアミロイドβ40の比率が低下したということは、脳内にアミロイドβタンパク質が蓄積している可能性を意味します。この比率の低下を年齢に換算すると、約4年分の加齢に相当しました。
認知機能テストの結果についても、新型コロナウイルスの感染によって悪化しており、年齢換算で約2年分の加齢に相当すると見積もられました。論文著者らは「新型コロナウイルスへの感染は、将来的な認知症のリスクを高める可能性がある」と結論しています。