FA人的補償で奥村とられた巨人に「育成放棄だ」と怒りの声
「私が巨人の投手コーチをやっていたころは、高卒選手は5年間は面倒を見るという球界の暗黙の了解があった。高校生は伸びしろがある分、長い目で見る。ドラフトで獲得した以上、せめて最初の1年くらいは28人のプロテクトリストに入れて保護するのは、高校側への最低限の礼儀でもある。こんなことをやっていては、高校の指導者から『もう巨人には選手を預けない』となってもおかしくありません」
ただでさえ巨人は近年、高校側から敬遠される傾向がある。昨年、ドラフト上位候補を擁したある強豪校の指導者から「巨人さんは指名を見送っていただきたい。○○は他に行かせたい」と“指名拒否”を食らっている。理由は「二軍で段階を踏んで一軍に昇格するシステムが確立しているチームがある中、巨人は補強などで即戦力ばかりを重宝し、本気で高校生を育てて起用する気があるとは思えないから」と言う。
ヤクルトの昨季チーム防御率はリーグワーストの4.62。投手陣が課題なのは明らかで、真中監督は外野陣の層の薄さも懸念していた。ヤクルトが狙っているのは投手か外野手──。巨人にはそんな情報もあった。だから、通常ならリストから外れそうなベテランまで厚くプロテクトしたという。高卒1年目を終えた選手は取らないだろうと楽観視していた面もあるだろう。その裏には、若手軽視、育成軽視が透けて見える。
巨人の球団幹部は「ルールを作るべき」と、19歳の有望株を持っていかれて憤慨しているというが、お門違いな話。巨人は多くの高校やアマチュア球界全体を敵に回すことになるかもしれない。