卓球のプロとアマをめぐるシビアな人的交流の中で生きる
「田舎の両親が心配して、どうしても帰ってこいと……」(凌さん)
2人の郷里・四川省は08年の北京五輪直前に、死者・行方不明者8万7398人を出す大地震を経験していたからだ。
凌さんは「あれからずいぶん大人になった気がします」とつぶやいた。
張本が卒業した東宮城野小は震災後、津波被害に遭った荒浜小の生徒を受け入れ、張本の学年にも8人が移ってきた。中林和雄校長はこう振り返る。
「同級生はみな智和君が好きだった。本人は卓球と学校は完全に割り切っていましたが、卒業前には、智和君と卓球で対戦する行事を率先してやってくれ、にぎやかにいい思い出をつくってくれました」
やはり仙台出身の福原愛が、ロンドン五輪の銀メダルを持って東宮城野小を訪れ、張本と打ち合っている。ツイッターには続きがある。
「被災された方々に少しでも勇気を与えられるようにまたもっと努力し、活躍している姿をお見せしたいです」
余震におびえた経験が、アイデンティティーを固め、郷里・仙台への思いを強いものにしたのだ。 =つづく
(仙台在住フリーライター・武田泉)