好角家の能町みね子さんに聞く 大相撲TV観戦9つのポイント
■能町ノート
能町氏が相撲を見始めたのは平成4年から。以降、「幕内取組の99%を見ている」という。
「基本は生中継。見られないときは録画で、その日のうちに幕内、十両の取組はすべて見ます。1度だけ、07年初場所中に海外に行く用事があってそれができないことがあった。丸々一場所見られず、すごい罪悪感を感じました」
そんな能町氏が昨年からつけているのが相撲ノートだ。
「ほぼすべての取組を見ている割に内容を覚えていないのが悔しくて、つけ始めました。NHKのアナウンサーの方のノートを参考にしています。ああやって勝った、こんな相撲だった、と、全取組を自分の言葉で書いています」
■美しい所作
相撲の魅力は取組だけにあらず。土俵入りや四股などの所作も見どころだ。
「阿炎の四股は奇麗ですね。相撲はハチャメチャだけど、勝っても負けても取組後の礼では深々と頭を下げるのも印象的です。礼で言えば、北勝富士も負けた後の礼が非常に美しい。この所作ひとつから本人のマジメさがうかがえます」
■インタビュー
テレビ観戦ならではの楽しみが、力士のインタビュー。多くは「一日一番」などしか言わないが、中には印象的な力士もいる。
「玉鷲はインタビューが大好きで、いつもニコニコしている。以前、『ここ(インタビューを受ける場所)は夢の部屋ですから』とも話していたほどです」
大鵬の孫で貴闘力の息子である納谷も印象深かったという。
「13日目か千秋楽に各段の優勝インタビューがある。下位の力士の肉声を聞く機会はなかなかないので、いつも楽しみにしていますが、納谷は『緊張したか?』という質問の返事が『なんかぁ、テンション上がってー』ですから。遠藤みたいな寡黙な力士だと勝手に思っていたんですが、ああ大鵬の孫というよりは貴闘力の息子なんだなと実感した(笑い)」
■解説者
これも相撲中継には欠かせない。解説者の“横綱”と言えるのが北の富士だ。
「舞の海さんとのやりとりもこなれてきたので面白い。以前は舞の海さんが嫌いなのかなと思うフシもありましたが、先場所なんかは『今日は舞の海がいないから言うけど、アイツの相撲は本当に良かった』とベタ褒めですから。服装も個性的でオシャレ。赤い革のジャケットなんて、北の富士さん以外に着こなせない。解説のときは毎回楽しんで見ています」
解説者の個性を見比べるのも一興だ。
「錣山親方は舞の海さんとのコンビが絶妙です。舞の海さんの発言を錣山親方が真っ向から否定し、言い負かす。舞の海さんも面白がっている部分がありますね。尾車親方は、とにかく力士を褒める。例えば、朝乃山が出てくると、相撲ではなく必ず体格を絶賛する。『クビが太くて、肩が盛り上がって、胸から足にかけての張りが……』となめるように褒めるんです(笑い)」
■SNS、ブログ
「やっぱり元横綱朝青龍のツイッターはチェックしちゃいますね(笑い)。ちょっと間違った日本語で厳しいツイートをしていますけど、その裏に相撲に対する愛情が感じられる。西岩親方のおかみさんのブログは読む価値あり、です。部屋の苦労や不安、日々の出来事が非常に読みやすい文章でつづられています」
■弓取り式
結びの一番後に行われる弓取り式。弓を使った華麗な舞に目を奪われたファンも多いはずだ。
「先場所から春日龍が務めているんですが、まだまだなんですよ。前任者の聡ノ富士がうますぎて見劣りしてしまう。聡ノ富士は静と動の緩急が素晴らしく、歴史的に見ても相当うまい部類に入るんじゃないかな。最後に土俵を弓でトントンと3回叩くんですが、春日龍はそれが異常に速くて、もっとちゃんとやりなさい! って思ったりしてます(笑い)」
■砂かぶりの有名人
「高須クリニックの高須院長、西原理恵子さんは有名ですけど、その近くに松鶴家千とせさんがいるのも気付いてほしいですね。指定席なのか、いつも同じ席にいますから。その席に研ナオコさんがいたこともあった。やっぱり目立ちますね」
目を凝らして見ると、意外な有名人を発見できるかもしれない。
(取材・文 阿川大/日刊ゲンダイ)