著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

大リーグにも波及するか NFL「国歌斉唱時の不起立問題」

公開日: 更新日:

 それだけに、オーナー会議の決定は、選手らに国歌斉唱時の規律を義務付けつつ条件付きで選手に不起立の余地を残すという、玉虫色の決着を図るものだったのだ。

 だが、トランプ政権がオーナー会議に強い影響力を与えていたことは、新規則の決定後に副大統領のマイク・ペンスが「トランプ大統領にとって素晴らしい勝利だ」と発言したことからもうかがえる。

 何より、32人のオーナーが「フィールド上で起立しない場合は罰金を科せる」という新規則を全会一致で採択したのだから、選手会が「罰金という選手の利益を損なう処分について事前の相談なしに決めたことは許しがたい。労使協定と矛盾するいかなる規則も受け入れられない」と批判するのも当然のことだ。

 ところで、NFLの動きに比べ、大リーグでは一部に国歌斉唱時に起立しない動きはあっても、大部分の選手は国旗と国歌に忠誠を誓う様子を見せている。

 もちろん、政治的な立場は選手一人一人によって異なるし、国旗や国歌への意識も互いに異なる。何より、NFLを代表する選手であったキャパニックもリードも現時点で所属先が決まっていないことを考えるなら、大リーグの選手たちが自らの選手生命と引き換えに政治的な主張を貫くことに消極的であっても不思議ではない。

「フィールド上の抗議が、多くのNFL選手が愛国心を持たないという間違った認識を生み出してしまったことを残念に思う」というNFL選手会の声明は、スポーツと政治の関係の難しさを物語っているのである。
(アメリカ野球愛好会副代表、法大講師・鈴村裕輔=隔週月曜掲載)

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