独走阪神に「03年V彷彿」の声だが 今の虎戦士に不足なもの
勢いが止まらない。阪神は15日、広島に勝利し5連勝。13勝4敗で貯金9とした。
関西では早くも、「2005年以来の優勝だ」と大騒ぎになる中、「今季の阪神は星野監督時代に優勝した03年に近いものがある」との声もある。
今季ここまでチーム75得点はリーグトップ。近本、大山が本調子ではないものの、「7番・捕手」の梅野隆太郎が5割以上の得点圏打率を誇り、「8番・遊撃」のルーキー・中野拓夢(三菱自動車岡崎)も打席数こそ少ないものの、打率5割をマークするなど、下位打線が機能している。
18年ぶりの優勝に沸いた03年も「7番・捕手」の矢野燿大(現監督)、「8番・遊撃」の藤本敦士(現コーチ)が揃って打率3割以上をマーク。「恐怖の下位打線」を形成し、1試合平均5.2得点と点を取りまくった。
「そういう意味では似ているかもしれませんね」とは、評論家の福間納氏。
「今年は打線のつながりがいい。2番の糸原がバントではなく、積極的に打って高打率をマーク。一気に2点、3点を取りにいく攻めの野球を選手が体現することで、投手が楽な形で投げられている。03年はチーム本塁打数こそリーグ5位も、チーム打率.287、728得点はリーグトップ。犠打数も多かったですが、当時の星野監督は攻撃的野球を前面に出し、打線が非常につながりました」
投手陣では井川慶が20勝をマーク。伊良部秀輝、下柳剛、ムーアの3人が2ケタ勝利を挙げた。7月8日にセ界史上最速でマジック49が点灯。7月終了時で2位以下に17.5ゲームの大差をつけ、そのまま逃げ切った。その03年でさえ、4月終了時は17勝10敗1分け。今季はこれをしのぐペースで白星を重ねている。
九回で試合打ち切り制で「先発投手が重要」
ただ、03年当時にあって、今の阪神にないものもある。在阪の放送関係者が言う。
「03年は鉄人・金本知憲が広島からFAで加入。3番を打った。俊足の2番赤星が出塁すると、盗塁するまで打たなかったり、状況に応じた進塁打など、チーム打撃に徹した。好機で内野ゴロを打つと、併殺を防ぐために一塁へ全力疾走した。今の阪神は若返りが進み、金本のように野球を知り、選手のかがみになるような中心選手がいない。打線は波がある。チーム全体で調子を落としたときに、どうやって点を取るか。矢野監督の采配も重要です」
打の中心が金本なら、投は井川だった。20勝(5敗)を挙げ、チームに15個もの貯金をもたらしただけでなく、死のロードで4勝11敗と大きく負け越した8月に月間MVPを獲得。大黒柱としてフル回転した。
「今季はコロナ禍で九回で試合が打ち切られる分、先発投手が重要になる」とは、前出の福間氏。
「西勇と秋山に続く、先発が何人出てくるかでしょう。この2人は150キロを超える速球はない。変化球をうまく交えてきちんとコーナーを突けば勝てるということを証明している。藤浪やガンケルはタイプが違うにせよ、西勇や秋山をお手本にして先発がしっかりとゲームをつくれば、優勝にグッと近づくはずです」
ちなみに岡田彰布監督が指揮を執った05年は、鉄壁のリリーフトリオであるJFK(ウィリアムス、藤川、久保田)を擁し、投手力で押し切った。現在の岩貞、岩崎、スアレスも好投手とはいえ、JFKクラスの活躍を求めるのは酷だろう。打線は阪神が16年ぶりにペナントを手にするためには、打線のつながり以上に、先発投手の奮起がカギを握りそうだ。