著者のコラム一覧
上昌広医療ガバナンス研究所 理事長

1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。

五輪「入場制限」国民や選手への配慮が皆無、専門家も科学を置き去りにしている

公開日: 更新日:

 屋内競技は別だ。一定の感染リスクは避けられない。ただ、これもやり方次第だ。いくつかの臨床研究で示されている。

 例えば、スペインの研究者たちは1047人を対象に、屋内での5時間の音楽イベントに参加する人と、通常の生活を送る人とにランダムに振り分ける臨床試験を実施した。観客は入場前に抗原検査を受け、陰性を確認した。また、イベント会場は徹底的に換気した。

 この臨床試験では、音楽イベントに参加した465人中13人、対照群495人中15人が、その後のPCR検査で陽性と判明した。両群に差はなかった。検査を徹底することで、クラスターを拡大することなく音楽イベントを開催できたことになる。

 この研究はランダム化比較試験で最もエビデンスレベルが高い。5月27日に権威ある英「ランセット 感染症版」が掲載している。屋内競技もやり方次第だ。ところが、「専門家」からは、このような科学的事実は紹介されないし、朝日新聞も触れない。

 もちろん五輪の時期には感染力が強いインド株が流行しているかもしれない。スペインの臨床研究の結果を日本に応用する際には注意が必要だ。

 ただ、五輪で、どこまでリスクを取るかを決めるのは国民だ。やり方次第で感染リスクは下げることができる。専門家の仕事は、そのための判断材料を提供することだ。国民視点に立った提言を期待したい。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    石橋貴明のセクハラに芸能界のドンが一喝の過去…フジも「みなさんのおかげです」“保毛尾田保毛男”で一緒に悪ノリ

  2. 2

    清原果耶ついにスランプ脱出なるか? 坂口健太郎と“TBS火10”で再タッグ、「おかえりモネ」以来の共演に期待

  3. 3

    だから桑田真澄さんは伝説的な存在だった。PL学園の野球部員は授業中に寝るはずなのに…

  4. 4

    PL学園で僕が直面した壮絶すぎる「鉄の掟」…部屋では常に正座で笑顔も禁止、身も心も休まらず

  5. 5

    「ニュース7」畠山衣美アナに既婚者"略奪不倫"報道…NHKはなぜ不倫スキャンダルが多いのか

  1. 6

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  2. 7

    フジ火9「人事の人見」は大ブーメラン?地上波単独初主演Travis Japan松田元太の“黒歴史”になる恐れ

  3. 8

    ドジャース大谷 今季中の投手復帰は「幻」の気配…ブルペン調整が遅々として進まない本当の理由

  4. 9

    打撃絶不調・坂本勇人を「魚雷バット」が救う? 恩師の巨人元打撃コーチが重症度、治療法を指摘

  5. 10

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した