広島・新井貴浩の阪神FA移籍は最後まで読み切れなかった
広島の新井貴浩は最後まで読めなかった。この年はスカウト業務も兼ねていたため、担当ではなかったが、FA宣言をするギリギリまで編成部の見立ては「残留の可能性が高い」だった。それが「1カ月悩み抜いて結論を出した。残留したら、いつか後悔するかもしれない。カープが好きだからつらい。FAなんて、なかったらいいのに」と涙のFA会見。阪神への移籍が決まった。もちろん、最終的に本人の意思を確認し、オファーを出したからだが、阪神フロントも驚いたというのが実情だ。
新井貴は持ち前のリーダーシップを発揮し、新天地の阪神でも主力となった。東日本大震災の折には、選手会長として両リーグ同時開幕を訴え、11年に打点王に輝くなど、グラウンド内外で活躍。14年オフに自由契約を申し出て古巣の広島へ復帰した。私は09年からスカウト専任で、アマチュア選手を発掘することになった。