日ハム新庄監督3.29本拠地開幕戦“奇想天外プラン”の中身 「どえらいことする計画ある」

公開日: 更新日:

 日本ハムの新庄剛志監督(50)がこの日も奇策に打って出た。

 3日のヤクルト戦、1-1で迎えた九回2死二塁の場面だ。一打サヨナラのチャンスで、打席には捕手が本職ながらこの日は「5番・遊撃」でフル出場していた郡拓也(23)。打撃がウリの正捕手候補がカウント1-2と追い込まれると、すぐにベンチを出た新庄監督が、球審に代打・佐藤龍世(25)を告げたのである。佐藤は、指揮官が提唱する「追い込まれたら(投手方向に軽く打ち返す)ペッパー打法」を最も体現し、“ペッパー師匠”の異名を授かったお気に入り。1安打で勝利した前日2日の試合でも、カウント2-2からの軽打で右前に決勝のポテンヒットを放っていた。

【写真】この記事の関連写真を見る(24枚)

 2ストライクから打席に立ったその佐藤、ファウルで食らいつく粘りを見せたものの、6球目の150キロを三ゴロ。奇策は実らず試合は引き分けに終わったが、試合後の指揮官は楽しげにこう言った。

「追い込まれて食らいつくうまさはペッパー師匠が上。今日もいいゲームをした。最後打って欲しかったね」

■福山雅治“最後の臨時コーチ”招聘プラン

 その新庄監督、29日の本拠地開幕戦(対西武)では「どえらいことをする計画がある」と予告している。2月末の時点ですでに2万枚のチケットは完売。試合前のセレモニーでは、かねて親交のある同じ長崎県出身の歌手・福山雅治(53)を“最後の臨時コーチ”として招聘し、ライブを敢行するプランも浮上しているが、そうしたパフォーマンスはあくまで付録に過ぎない。

 新庄監督は就任会見で「新しい野球をつくっていくので楽しみに」と宣言。その公約通り、奇想天外なプランは戦術にも及ぶ。むしろ、本拠地開幕戦のメインはそっちだろう。

■「ベンチ入り投手全員の登板は可能?」

 日本ハムOBがこう言うのだ。

「新庄監督は就任後、投手担当のコーチらに『例えば、1カード3試合でベンチ入り投手全員を登板させるって起用は可能かな?』と尋ねたそうです。メジャーではリリーフ投手だけで短いイニングの継投を繰り返して1試合をまかなう『ブルペンデー』という戦術がある。栗山監督時代にも何度か取り入れて、一昨年の9月には先発の加藤から村田、玉井、宮西とつないで1安打ゼロ封勝利を挙げている。そんなことを説明すると、『ブルペンデーではなく、もっと大胆に先発投手もリリーフ投手も1カードで全部つぎ込んじゃう。9回を9人のピッチャーでやるとか、3試合で12人の投手を1人30球ずつでつないでいく感じ』と検討するよう指示をしたと聞いています。先発ローテーションがぐちゃぐちゃになるし、投手はつぎ込めばつぎ込むほど調子の悪い投手が出てくるリスクがある。現実的じゃありませんが、新庄監督は『(相手)バッターは絶対にイヤだと思う』と大真面目だったそうですから、あるいは、本拠地開幕戦でアッと驚く投手起用をやる可能性はあると思いますよ」

ビッグボス流の理屈と根拠

 周囲には突拍子のない思い付きに見えても、新庄監督には新庄監督なりの理屈というか根拠がある。オープン戦では15年ぶりとなる1安打勝利を挙げた前日2日のヤクルト戦の得点シーンが象徴的だ。四球を突破口にエンドラン、盗塁と機動力を駆使してつくった七回1死二塁の好機。途中出場の4番細川がセーフティー気味の犠打で2死三塁とし、続く佐藤がチーム唯一の安打で虎の子の1点をもぎ取ったのだが、三塁に走者を進めた細川の犠打がミソだった。

 評論家の橋本清氏がこう言う。

「聞けば、キャンプ中に新庄監督からコーチや選手に『送りバントは基本的にすべてセーフティー気味にやるように』との指示が出ているそうです。確実性が減るように思えますが、『普通にバントをしようと構えてしまうと体が固まる。セーフティーのつもりで動きながらやった方が体に柔らかさが出て、逆に成功率が上がる』という新庄監督流の裏付けがあるのです。先のキャンプでの対外試合2試合目の阪神戦で、先発の藤浪に対して初回の先頭打者から3者連続でセーフティーバントを試す奇襲をやった。ひとりも成功はしませんでしたが、『オレは何をしてくるか分からない』と笑っていた。選手に実戦をつかって意識づけをするのと同時に、開幕後を見据えてパのライバルチームを揺さぶった。25日からの敵地でのソフトバンク開幕3連戦、続く本拠地での開幕カードは相手やファンに新庄野球を印象付ける特別な6試合になる。打者一巡のセーフティー攻撃や、逆に全打席本塁打指令とか、極端なことをやってきても不思議はありません」

 なにしろ、「今年1年間はトライアウト」「新人も含めて全員を一軍の試合で使う」と宣言している指揮官だ。ポジション、打順のガラガラポンは当たり前。センターラインの強化が野球の定石というなら、「外野は2人で守って、センターラインにもうひとり内野手を置いて5人にしてみたらどうか?」と自著「スリルライフ」で型破りな構想を開陳する男である。

 年始の日刊スポーツのインタビューで、パフォーマンスではなく「采配の面でのサプライズを期待してもらえたら」と語っていた新庄監督の本拠地開幕戦。勝ち負けはともかく、最高値1万3300円のチケット代の元は取れそうだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    岡田阪神は「老将の大暴走」状態…選手フロントが困惑、“公開処刑”にコーチも委縮

  2. 2

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  3. 3

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  4. 4

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  5. 5

    中日・根尾昂に投打で「限界説」…一軍復帰登板の大炎上で突きつけられた厳しい現実

  1. 6

    安倍派裏金幹部6人「10.27総選挙」の明と暗…候補乱立の野党は“再選”を許してしまうのか

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    79年の紅白で「カサブランカ・ダンディ」を歌った数時間後、80年元旦に「TOKIO」を歌った

  4. 9

    阪神岡田監督は連覇達成でも「解任」だった…背景に《阪神電鉄への人事権「大政奉還」》

  5. 10

    《スチュワート・ジュニアの巻》時間と共に解きほぐれた米ドラフト1巡目のプライド