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阿波野秀幸元プロ野球選手

1964年7月28日、神奈川県生まれ。桜丘高、亜大を経て、86年のドラフト1位で巨人、大洋(現DeNA)を含めた3球団競合の末、近鉄に入団。87年、新人王、89年は19勝(8敗)、183奪三振で最多勝と最多奪三振のタイトルを獲得。その後、巨人、横浜でプレー、通算75勝68敗5セーブ。引退後は巨人、横浜、住友金属鹿島、中日などでコーチを務めた。

濡れたボールをそのまま投げる胸中…35歳で知恵と工夫が必要と痛感

公開日: 更新日:

 あれは横浜に移籍して2年目、1999年のシーズンだった。

 雨の日に神宮球場で投げていたときのことだ。使っていたボールは結構、グラウンドを転がっていて濡れている。内野手がボール回しをして、最後に三塁手の進藤達哉のところへ。進藤は気を利かせて濡れたボールを交換しようとしたため、「しんちゃん、(交換しなくて)いいから。そのまま、よこして」と言った。

 すると進藤は「濡れてますけど、いいんですか?」とニヤニヤ。まったく、バッターに意地悪なことをしようとするんですね、と言わんばかりだった。

 当時、日本のプロ野球界にはツーシームが浸透しつつあった。速い球が打者の手元でシュート回転しながら沈むボールのことだ。

 打者に近い位置で小さく変化するから、バットの芯を外す効果がある。私は35歳。新たなものに挑戦したくなる、というか、せざるを得なくなるころだ。

 濡れているボールは勝手に動くから、ツーシームのような動く速球になり得ると思ったのだ。

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